Android スマホの急速充電とは?
Android スマホの急速充電とは、通常充電より大きな「電力」を供給することで、充電時間を短縮するものです。
急速充電するには、スマホ本体はもちろん、充電器やケーブルも急速充電に対応している必要があります。ほとんどのスマホでは、急速充電器をケーブルで接続するだけですぐに急速充電を始められ、スマホでの設定は不要です。
また、急速充電が行われているときは、「急速充電中」と表示されたり、バッテリーや充電中のアイコンが変わったりする機種もあり、通常充電と区別がつきやすいでしょう。
急速充電で重要な単位である「W(ワット)」
前述のとおり、急速充電は通常充電より大きな「電力」を供給して充電時間を短縮するため、急速充電器やケーブルを購入する際には「電力」の数値を確認することが大切です。「電力」の単位は「W(ワット)」で、W 数が大きいほど、より多くの電力を供給でき、より急速に充電できます。
ただし、急速充電には明確な定義がなく、何 W 以上をもって急速充電とするかは一般的に定められていません。また、急速充電と表記されず販売されている充電器やケーブルもあり、購入時に悩む人も多いようです。
そこで目安となるのが、お持ちのスマホが対応する最大 W 数です。それを超えた電力では充電できないため、最大 W 数と同等の充電器やケーブルであれば最速で充電でき、それより大きな W 数である必要はありません。
たとえば、Google Pixel 8 Pro は最大 30 W の急速充電に対応しているため、30 W までは W 数が大きいほど充電速度は早くなりますが、30 W 以上であれば充電速度は変わらなくなります。※1
急速充電に対応した規格
急速充電に対応した規格はいくつかあるため、どのようなものがあるのかを詳しくみてみましょう。
大電力を供給できる「USB PD 規格」
「USB PD」は「USB Power Delivery」の略称で、従来の USB よりも大きな電力を供給できる点が一番の特長です。USB 技術の進歩と普及を目的とした「USB-IF(Implementers Forum)」 によって策定されました。
USB PD は、 Android スマホでよく使われている USB Type-C® を用いた規格のため使いやすく、W 数は製品によって異なりますが最大で「240 W」の大きな電力を供給できます。そのためスマホだけでなく、タブレットやノートパソコンなどの大型デバイスへの給電も可能です。また、充電器に複数のポートがあれば、複数のデバイスを同時に充電することもできます。
ワイヤレスの「Qi 規格」
「Qi(チー)」は、専用の充電器の上にスマホを置いてワイヤレスで充電できる規格です。ワイヤレス充電技術の国際標準規格を普及する「WPC(Wireless Power Consortium)」によって策定されました。
充電器の形状は、スマホを平面に置くパッドタイプ、スマホを立てかけるスタンドタイプ、スマホを固定するマウントタイプ、持ち運べるモバイルタイプなどさまざまです。なお、W 数は製品によって異なりますが「15 W」が最大です。
メーカーや業界団体の「独自規格」
急速充電には、スマホメーカーや業界団体が独自に開発した規格もあります。たとえば、「Google Pixel Stand (第 2 世代)」はスタンドタイプのワイヤレス充電器で、対応する Google Pixel に対しては最大 23 W、Qi 認証済みデバイスに対しては最大 15 W の電力を供給し、静音型の冷却ファンも搭載しています。
スマホメーカーの独自規格で急速充電を行う場合は、メーカー純正の充電器を購入し、充電器に付属したケーブルを使用した方がよいでしょう。
急速充電器の選び方
これまで W や充電規格について解説しましたが、実際に急速充電器を選ぶときにはどのようなポイントがあるのでしょうか。ここでは、急速充電器の選び方を解説します。
急速充電器を選ぶポイント
急速充電器を選ぶ際には、前述のとおりスマホの最大 W 数が重要です。スマホの最大 W 数と同等の充電器であれば最速で充電できるため、取扱説明書やメーカーの公式サイトなどで確認しましょう。
なお、販売されているほとんどの製品には W 数が書かれていますが、もし記載がない場合は「電流」の単位である「A(アンペア)」と「電圧」の単位である「V(ボルト)」を確認してください。電力は「電力(W)= 電流(A) × 電圧(V)」の公式で求められ、A と V の数値を掛け算すると W の数値になります。
USB PD 規格の選択ポイント
USB PD 規格の急速充電器は最大 240 W の大きな電力を供給できるため、スマホだけでなくタブレットやパソコンの電源としても併用できます。その場合は、それぞれのデバイスに必要な W 数を確認して購入してください。また、複数ポートを使って複数のデバイスを同時に接続したい場合は、各デバイスの W 数を合計した W 数が必要です。
ただし、一般的に W 数が大きくなるほど充電器のサイズも大きく、重くなりがちです。外出先でも充電器を使う場合は、携帯性との兼ね合いも考えて選ぶと持ち運びやすくなります。
なお、充電器をより安心して使用するためには、純正やメーカー推奨の充電器を使用したり、USB-IF の「Certified USB Charger Program」に認証されている製品を選んだりするとよいでしょう。USB-IF に認証された製品は、パッケージに最大 W 数を記載したロゴが表記されています。
Qi 規格の選択ポイント
ワイヤレス充電の規格である Qi の急速充電器を選ぶ際は、最近の Android スマホは最大 W 数が 15 W 以上をサポートしている機種が多いため、Qi 規格の最大である15 W の製品を選ぶとよいでしょう。
そのうえで、スマホを寝かせて充電したい場合はパッドタイプ、立てて充電したい場合はスタンドタイプなど、充電スタイルに合う形状のものを選ぶと、理想的なワイヤレス充電器が手に入りやすくなります。
ケーブルの選び方
急速充電するには、スマホや充電器だけでなくケーブルも急速充電に対応する必要があります。充電器を選ぶ際と同様に、利用する「規格」や「W 数」を必ず確認しましょう。スマホや急速充電器がサポートする最大 W 数と同等のケーブルを選ぶことで、それらの性能を最大限に活用できるようになります。
また、USB PD 対応のケーブルは、製品によって電流の数値が 3 A や 5 A などと異なる場合があり、選択に悩むかもしれません。しかし、USB PD の充電器は、最大 W 数の範囲内でスマホやケーブルに最適な A や V を自動で選択してくれるため、A 数にはあまりこだわらず、必要な W 数で判断するとよいでしょう。
タブレットやパソコンなどの充電にも同じケーブルを利用したい場合は、それらが必要とする W 数を確認して購入してください。
なお、ケーブルをより安心して使用するためには、純正やメーカー推奨の充電器を使用したり、USB-IF の「Certified USB Charger Program」に認証されている製品を選んだりするとよいでしょう。
Android の急速充電を上手に活用しよう
急速充電の概要や基礎知識、急速充電器やケーブルの選び方について解説しました。
充電器やケーブルの W 数が大きいほど、より多くの電力を供給でき、より急速に充電できます。しかし、スマホの最大 W 数を超えた電力は供給できないため、それ以上に大きな W 数の製品を購入しても充電速度は速まりません。そのため急速充電器を購入する際には、スマホの最大 W 数が一つの目安になるでしょう。
ただし、スマホよりも大きな電力を必要とするタブレットやパソコンと併用したい場合には、それらが必要とする W 数も確認して購入しましょう。複数のデバイスを同時に接続する場合なら、各デバイスの W 数を合計した W 数が必要です。
また、急速充電に対応した規格には、大電力を供給できる USB PD 規格、ワイヤレス充電の Qi 規格、スマホメーカーの独自規格など複数があります。ご自身にとって最適な充電器やケーブルを揃えることで、快適なモバイル環境が実現できるでしょう。
※1 充電器やケーブルの性能は製品によって異なるため、同じ W 数でも製品によって充電速度は異なる場合があります。また、充電器やケーブルの劣化により、十分な速度を得られない場合もあります。
※USB Type-C® は USB インプリメンターズ フォーラムの商標です。
※本記事で紹介した内容は、Android のバージョンや機種によって異なる場合があります。
※本記事で紹介した内容は、執筆時(2024 年 5 月)のものです。