Wi-Fi の速度を測定する方法と結果の見方
Wi-Fi の通信速度が遅いと思ったら、まずは今どのくらいのスピードで通信できているかを確かめてみましょう。ここでは、通信速度を測定する方法と、測定結果の見方を解説します。
※本記事で紹介している通信速度の測定方法は、Wi-Fi の性能だけでなく、インターネット接続(プロバイダ)の速度にも影響を受けます。
スマホで通信速度を測定する方法
通信速度は、Google が Measurement Lab(インターネットのパフォーマンスを研究・測定する研究団体)と提携して実施する、インターネット速度テストで測定できます。Wi-Fi に接続しているときは Wi-Fi の通信速度を、Wi-Fi をオフにした状態では契約している携帯通信会社のモバイルデータ通信の速度を計測します。
Wi-Fi の通信速度をスマホで測定する手順は、以下のとおりです。
- Wi-Fi に接続したスマホで google.com にアクセスします
- 検索欄に「internet speed test」または「インターネット速度テスト」と入力して検索します
- 「インターネット速度テスト」ボックスの [速度テストを実行] ボタンをタップします
- ダウンロードとアップロードの速度のテスト結果が表示されます
※測定の際は、通常のインターネット接続と同様に通信が行われています。従量課金制もしくはデータ通信量に上限のあるモバイルデータ通信やポケット型 Wi-Fi などで速度テストする場合はご注意ください。
インターネット速度テストの結果画面の見方
インターネット速度テストの結果画面では、以下の情報を確認できます。
【ダウンロード速度 / アップロード速度】
「ダウンロード(下り)」「アップロード(上り)」は、通信の方向を意味しています。Google が提供するインターネット速度テストでは Mbps という単位で表現され、数値が大きいほど高速です。単位については、次の「通信速度を表す単位や数値」で解説します。
- ダウンロード: インターネット サーバーや、他のデバイスからデータを受信する速度を示しています。ウェブページの閲覧や動画のストリーミング再生、ファイルのダウンロードなどを行う際の通信がこれに該当します
- アップロード: インターネット上のサーバーや他のデバイスへデータを送信するときの通信速度を示しています。たとえば、写真や動画を SNS にアップロードしたり、チャットアプリで送信したりするときの通信速度が「アップロード速度」に該当します
【レイテンシ】
レイテンシとは、サーバーからの応答時間(通信の遅延時間)のことです。ミリ秒(ms)単位で表現され、低ければ低いほど遅延が少なくなります。遅延時間については、後ほど解説します。
【サーバー】
インターネット速度テストを行う際に、通信先として使用したサーバーの位置を示しています。
※インターネットを使用する時間帯や場所によって速度は異なります。
通信速度を表す単位や数値
ここでは、通信速度を表す単位やよく使われる関連用語、数値の意味などについて解説します。
bps(ビーピーエス)
通信速度は、bps(ビーピーエス)という単位で表します。「bps」は「bits per second」の略で、1 秒間にどれだけのデータを送れるかを意味しており、値が大きいほど短時間で多くのデータをやり取りできます。
なお、1,000 倍ごとに単位が変わります。
1 kbps(キロ ビーピーエス)= 1,000 bps
1 Mbps(メガ ビーピーエス)= 1,000 kbps
1 Gbps(ギガ ビーピーエス)= 1,000 Mbps
※1,000 倍ではなく 1,024 倍で換算する方法が使われることもあります。
理論値と実測値
インターネット回線を紹介するサイトや回線の契約内容に記載されている「1 Gbps」などの最大通信速度は、理想的な状態における数値です。回線の混雑状況や Wi-Fi ルーター(以下ルーター)との通信距離などさまざまな要因があるため、実測値(実際の速度)は理論値(理論上の最大値)を下回ります。スマホで通信速度を測定する方法で紹介した測定結果の値は、実測値となります。
遅延時間
レイテンシとして表記される遅延時間は、デバイス間のデータ送受信にかかる時間を表しています。レイテンシの単位は「ms(ミリ秒。1,000 分 の 1 秒)」で、小さいほど遅延が少ない状態です。
オンラインゲームなど、多くのデータをスピーディに送受信しなければならない場面では、通信速度に加えてレイテンシも重要です。
通信速度を測定するサイトによっては、レイテンシではなく「Ping 値」と表記されることもあります。技術的には違いがありますが、単純にレイテンシと同じ意味で使われていることもあり、インターネット利用者から見れば、どちらも同じ遅延時間を指していると思って差し支えないでしょう。
快適な通信速度とは
通信速度が速い環境では、高画質な動画のストリーミング再生やオンラインゲームの快適なプレイ、スムーズなビデオ会議などが可能です。特にダウンロード速度が速ければ、短時間でより多くのデータを受信できるため、ストレスを感じずにインターネットを利用できるでしょう。
ダウンロード速度の目安は、以下のとおりです。
50 Mbps 以上 | 複数デバイスでの 4K 動画の同時視聴、オンラインゲーム、ビデオ会議が可能 |
13 Mbps 以上 | 複数デバイスで HD 動画の安定したストリーミング再生が可能 |
7 Mbps 以上 | 1 本の HD 動画の安定したストリーミング再生が可能 |
3 Mbps 以上 | 1 台のデバイスで標準画質の動画のストリーミング再生が可能 |
3 Mbps 未満 | メールや SNS のメッセージ受信、ウェブ ブラウジングは可能だが、動画の読み込みが遅くなる可能性がある |
写真や動画を投稿するなど、インターネット上にデータをアップロードする際にはアップロード速度が重要です。アップロード速度の目安は、以下のとおりです。
10 Mbps 以上 | SNS や YouTube などの動画投稿 |
3 Mbps 以上 | SNS の投稿、写真の送信 |
3 Mbps 未満 | メールやチャットアプリなどでのメッセージ送信 |
Wi-Fi が遅い原因と速度を上げる対処法
Wi-Fi の最大速度は、ご契約中のインターネット回線の速度に依存します。そのため、まずはプロバイダとの契約内容を確認し、測定した Wi-Fi の通信速度と見比べてみるとよいでしょう。
契約内容(理論値)と測定結果(実測値)が近い場合、インターネット回線速度以上に Wi-Fi 速度を速くすることはできないため、通信速度の改善は難しいでしょう。
契約内容と測定結果がかけ離れている場合は、原因を特定して対処することで、Wi-Fi 速度を改善できる可能性があります。ここでは、 Wi-Fi 速度が遅くなる主な原因と対処法を解説します。
ルーターの設置場所が適していない
Wi-Fi の電波は壁やドアなどの障害物によって遮られることがあります。特に金属やコンクリート、水槽の水などは電波を弱める原因になるため、ルーターを高い位置に設置して、使用するデバイスまでの見通しをよくするなどの対策を行うとよいでしょう。
ルーターの設置場所を変えられない場合は、Wi-Fi 中継器を使う方法もあります。Wi-Fi 中継器をルーターと電波の届きにくい場所の中間地点に設置することで、電波が届きやすくなります。
また、一戸建てや広いマンションなどの広範囲をカバーしたい場合は、メッシュ Wi-Fi を設置する方法もあります。
適切な周波数帯に接続されていない
ルーターには、2.4 GHz 帯、5 GHz 帯、6 GHz 帯の周波数帯があり、それぞれに特徴があります。詳細は後述しますが、たとえば 2.4 GHz 帯と 5 GHz 帯を利用できるルーターを使っている場合、ルーターとデバイスの間に遮蔽物が少ない環境であれば、基本的には、規格上の通信速度がより速い 5 GHz 帯に接続するのが良いといえるでしょう。
接続中の周波数帯は、以下の手順で確認できます。
- Wi-Fi に接続した状態で設定アプリを開きます
- [ネットワークとインターネット] をタップします
- [インターネット] をタップします
- 接続中の Wi-Fi の右側にある設定アイコン をタップします
- 「周波数」の項目で、接続されている周波数を確認できます
※利用できる周波数帯は ルーターやスマホの機種によって異なります。
電波干渉が起こっている
前述の通り、ルーターは 2.4 GHz 帯や 5 GHz 帯、6 GHz 帯の周波数帯を使用します。2.4 GHz 帯は周波数が低いため広範囲に電波が届きやすく、壁や床などの障害物に強いという特徴があります。
しかし、一部のコードレス電話機、テレビ、電子レンジ、ファクス、Bluetooth 搭載デバイス、IoT 製品などの家電も 2.4 GHz 帯を使用しているため、Wi-Fi も同じ周波数帯を使用している場合は各家電の間で電波干渉が起こり、通信が遅くなることがあります。そのため、ルーターをこれらの家電製品から離れた場所に移動することで、通信速度が改善される可能性があるでしょう。
一方、5 GHz 帯と 6 GHz 帯は Wi-Fi (無線 LAN)専用の周波数帯なので、家電からの電波が干渉することはありません。ただし、5 GHz 帯と 6 GHz 帯は壁などの障害物に弱いため、部屋の間取りやルーターを設置する場所によって、電波の強度が変わる場合があります。
お使いのルーターやスマホが 5 GHz 帯 や 6 GHz 帯に対応している場合は、周波数帯を変更しても良いかもしれません。
接続数が多い
ルーターへ同時に接続できるデバイスの数(最大接続可能数)は、ルーターの機種によって異なります。機種ごとに推奨する接続数が定められている場合が多く、多くのデバイスを接続して同時に大量のデータ通信を行うと、通信速度が低下する可能性があります。
ルーターのファームウェアが最新ではない
ファームウェアとは、ルーターなどの電子機器を制御するためのソフトウェアのことです。スマホのアプリや OS と同じように、ルーターのファームウェアにもアップデートがあり、最新の状態にすることで、ルーターの不具合の修正や、パフォーマンスが改善される場合があります。
また、ファームウェアの更新には、セキュリティ面の改善が含まれる場合もあります。そのため、ルーターのファームウェアが最新かどうかを定期的に確認するとよいでしょう。ファームウェアのアップデート方法は、お使いのルーターのウェブサイトをご確認ください。
スマホ側に原因がある
スマホに金属製のケースなどを装着している場合は、金属が電波に干渉している可能性があります。一度ケースを外してから、通信速度を計測してみるとよいでしょう。
また、ソフトウェア アップデートすることで、今よりも通信速度が速くなることがあります。パソコンやタブレットなど、スマホ以外のデバイスの通信速度に問題が無い場合は、ソフトウェア アップデートを試してみるとよいでしょう。
Android のシステム アップデートの方法は、以下のとおりです。
- スマホの設定アプリを開きます
- [システム] をタップします
- [ソフトウェアのアップデート] をタップします
- [システム アップデート] をタップします
- OS が最新のものでなかった場合、右下の [アップデートをチェック] をタップし、手順に沿ってアップデートを行いましょう
また、スマホの動作が重くなると、ウェブページの読み込みなどの動作が遅くなる場合があるため、通信速度が遅くなったと感じるかもしれません。この場合はスマホを再起動すると改善することがあります。
Android スマホを再起動する方法は、機種や Android のバージョンによって異なるので、お使いのスマホのメーカーや携帯通信会社のサイト等から確認して再起動してみましょう。Google Pixel を再起動する方法については、ヘルプセンターの Google Pixel の電源をオンまたはオフにするをご覧ください。
それでも通信速度が改善されないときは
これまでに紹介した対処法を試しても通信速度が改善されない場合、以下の方法で解決する可能性があります。
ルーターやモデム(ONU)を再起動する
ルーターやモデムを長時間起動したままにしていることが、通信速度の低下に影響している可能性もあります。その場合はルーターとモデム(ONU)を再起動しましょう。一般的な再起動方法は、以下のとおりです。
- ルーター → モデム(ONU)の順番で電源コードをコンセントから抜き 15 秒ほど待ちます
- モデム(ONU)→ ルーターの順番で電源コードを再び挿入します
- すべてのコードとケーブルの両端がしっかりと差し込まれていることを確認します
- ルーターやモデムのライトが正常に作動するまで、数分ほど待ちます
機種によっては再起動ボタンがありますので、ご利用中のルーターやモデムの説明書、ホームページ等をご確認ください。
ルーターとスマホの規格を確認する
Wi-Fi の通信規格にはいくつか種類があり、それぞれ最大通信速度や機能が異なります。スマホとルーターの Wi-Fi 規格が異なる場合、通信速度は、最大通信速度が遅い方の規格に合わせられます。
そのため、たとえばスマホが高速な Wi-Fi 規格に対応しているのに、古い世代のルーターを使っている場合、スマホが対応しているより高速な Wi-Fi 規格のルーターに買い替えると、通信速度が速くなる可能性があります。
現在お使いのルーターの規格と通信速度を確認してみましょう。
Wi-Fi 規格 | 世代 | 最大通信速度 | 周波数帯 |
Wi-Fi 4 (IEEE 802.11n) |
第 4 世代 (2009 年) |
600 Mbps | 2.4 GHz 帯 / 5 GHz 帯 |
Wi-Fi 5 (IEEE 802.11ac) |
第 5 世代 (2013 年) |
6.9 Gbps | 5 GHz 帯 |
Wi-Fi 6 / 6E (IEEE 802.11ax) |
第 6 世代 (2021 年) |
9.6 Gbps | 2.4 GHz 帯 / 5 GHz 帯 / 6 GHz 帯(※6 GHz は Wi-Fi 6E のみ) |
Wi-Fi 7 (IEEE 802.11be) |
第 7 世代 (2024 年) |
46 Gbps | 2.4GHz 帯 / 5 GHz 帯 / 6 GHz 帯 |
お持ちのスマホのスペックやルーターの仕様は、ホームページや説明書等で確認できます。
また、配線に使う LAN ケーブルの規格(カテゴリ)にも種類があり、それぞれ対応する最大通信速度が異なります。モデムや ONU など、ネットワーク機器が LAN ケーブルでつながっている場合は、LAN ケーブルの規格も確認するとよいでしょう。
ただし、この場合も、契約している回線速度以上の通信速度にはなりませんので、ご注意ください。
Wi-Fi の速度を見直して快適な通信環境を手に入れよう
スマホで Wi-Fi の速度を測定する方法や測定結果の見方、通信速度を表す単位や数値、Wi-Fi が遅くなる原因と対処法について解説しました。Wi-Fi の通信速度が遅いと感じたらまずはインターネット速度テストを行い、快適とされるダウンロードとアップロードの速度の目安と比較してみましょう。
速度を改善したい場合はルーターの設置場所の変更や、スマホのシステム アップデートなどを試してみましょう。古い世代のルーターを使っている場合は、買い替えを検討しても良いかもしれません。通信環境をさらに快適にしたい方は、本記事を参考に設定や環境を確認してみてはいかがでしょうか。
※本記事で紹介した内容は、Android のバージョンや機種によって異なる場合があります。
※本記事で紹介した内容は、執筆時(2024 年 9 月)のものです。